


部長(湊谷)、医長2名(松田(ステントグラフト治療を担当)、佐々木(集中治療部門責任者兼務))、医師2名(田中、伊庭)、専門修練医1名、レジデント3名の計9名からなっています。スタッフ全員が「心臓血管外科専門医」であり、一部、「循環器専門医」、「脈管専門医」、「救急専門医」の資格を有し、血管疾患のみならず、合併する冠動脈疾患や弁膜疾患にも十分対応できます。
※外来担当(9:00~14:00)
| 曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 外来担当 | 松田 | 田中 | × | 湊谷、佐々木 | 伊庭 |
当センター開設以来、中島伸之(1978-92年)、高本眞一(1993-97年)、大北 裕(1998-99年)、安藤太三(2000年)らが部門主任を務めてきましたが、その大動脈手術件数は、胸部で3000件、腹部で2000件を超えています。最近のステントグラフト治療(EVAR・TEVAR)を含め待機手術を週12例以上のペースで行っており、大血管の緊急手術を含めると、昨年の総手術件数は年間634件とこの十年で倍増しました(図1)。
※手術予定枠
| 曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 手術枠 | 2 | 2 | 1 | 1 | 2 |
1枠手術:午前-午後手術(胸部大動脈手術)
半枠手術:半日(午前ないしは午後)手術(腹部、末梢血管手術、ステントグラフト治療)
【図1.血管外科部門手術件数】
大血管から末梢血管疾患まで血管疾患を幅広く扱っています。なかでも大血管手術が半数以上を占め、その数は高齢化に伴い年々増加傾向にあります(図2)。特に、難易度の高い自己弁温存手術を含めた大動脈基部再建、弓部大動脈全置換、胸部下行・胸腹部大動脈置換などの手術経験は、緊急手術を含め豊富です(図3、4)。また、Marfan症候群などの遺伝性結合織異常疾患(遺伝子診断および専門外来あり)や高安動脈炎などの炎症性動脈疾患などの難易度の高い特殊疾患も多く取り扱っており、その経験数は国内随一です。
【図2.大動脈手術件数(ステントグラフト治療を含む)】
【図3.胸部大動脈手術(2008年)】
【図4.部位別胸部大動脈手術(1993-2005)】
十分な経験を積んだ5名の大動脈外科専門医を揃えた施設は当センター以外にはみられず、急性大動脈解離や大動脈瘤破裂などの急性大動脈疾患にも昼夜を問わず24時間体制(当直、あるいは1st Call、2nd Callの呼び出し体制)で積極的に対応しています(図5)。
【図5.緊急大血管手術(急性肺血栓塞栓症を含む)】
最近では直達手術だけではなく、低侵襲なEVAR・TEVARやハイブリッド治療(手術とEVAR・TEVARの併用)も症例に応じて行っています。2007年の「既成ステントグラフト」の認可に合わせ、手術室をステントグラフト治療専用に改装し、二名(血管外科 松田、放射線科 福田)の資格指導医が中心になり週4例のペースで治療を進めています(図6、7)。近々、ハイブリッド治療の専用手術室を設置し、緊急症例に対する血管内治療を積極的に推し進める予定です。
【図6.ステントグラフト治療専用手術室】
【図7.大動脈ステントグラフト治療(左:腹部 EVAR、右:胸部 TEVAR)】
部門の重要な特徴として、血管内科専門医と放射線科医の協力を得て、毎週火曜日夕方の「血管カンファレンス」(外部からの参加も可能)を中心に、検査、診断から治療、術後のfollowまで系統立てて診療を行っている点が挙げられます。さらに、重症肺高血圧症を伴った予後不良の疾患である慢性肺動脈血栓塞栓症(CTEPH)の外科治療も、心臓血管内科(肺循環部門)と共同で積極的に進めており、全国の手術件数の半数近くを担当しています。末梢血管に関しても、内科治療、カテーテル治療、外科治療を各部門で担当し、「三位一体」の集約的治療を行っています。
対象疾患として、
など大血管から末梢血管までの様々な血管疾患を扱っています。
手術適応: 破裂するまで無症状なことがほとんどです。一旦破裂すれば、救命率は10~20%以下と低く、破裂前の治療が必要です。一応の目安は、胸部大動脈瘤で55mm以上、腹部大動脈で45mm以上、が手術適応です。大動脈瘤の形状も重要で、嚢状瘤は破裂しやすく、早期の手術が必要です。また、拡大する速さも重要で、半年で5mm(一年で10mm)以上の速さで拡大する場合も手術適応となります。
などが主な治療内容です。
人工血管置換範囲により、図8のごとく分類されます。
【図8.部位別大動脈人工血管置換(上行置換は基部置換を含む)】
大動脈弁輪拡張症を代表とする大動脈基部病変に対し、自己弁温存基部再建(David法ないしはYacoub法)(図9、10)、あるいは人工弁を用いた基部置換(Bentall法)(図9)を施行しています。
※自己弁温存術式として変遷がありましたが、現在はValsalva-graftによるValsalva-David法を用いています(図10)。対象はMarfan症候群に代表される結合織異常疾患が中心ですが(3)、その他、大動脈解離や上行大動脈の変性による拡張症も含まれます。手術適応に関して、結合織異常疾患症例では、自己弁温存術式の適応は45mmです。なかでもLoeys-Dietz症候群や大動脈解離の家族歴を有する場合は、40~45mmとより早期の手術が推奨されます。その他の症例では、50mmを一応の判断基準としますが、自己弁温存のためには、大動脈弁逆流(AR)が発生する前のより早期の手術が理想的です。最近では、他の遺伝性疾患も見つかっており、早期手術で良好な成績が得られています。
※Bentall手術は1967年に開発された手技ですが、依然として大動脈基部病変に対するgold standardと考えており、弁温存が不可能な症例や、炎症性疾患、高齢者を対象に施行しています。術式においてこれまで様々な改良がなされてきましたが、当センターでは高安動脈炎や血管Behcetなどの困難な疾患を多く扱ってきた経緯もあり、人工弁を人工血管の端から少し離して縫着する「スカート法」(図9)を採用しており良好な成績が得られています(5、21、22)。手術経験も国内随一です。
【図9.大動脈基部置換】
【図10.現行のValsalva-David法(6針法)】
大動脈解離を含め、主として変性(中膜壊死を含む)を原因とし50~55mm以上の上行大動脈拡大を認める症例が適応となります。変性は上行大動脈から一部弓部大動脈まで及んでおり、ほとんどの症例でhemiarch置換を選択します。その場合、循環停止を必要とし脳合併症が発生する可能性がありますが、現在の中等度ないしは超低体温を用いた順行性脳灌流法の信頼性は高く、頻度的に多くはありません。
※基部拡大のない、上行大動脈のみの拡大に伴うARの場合: STJの拡大がARの原因であることがあり、STJを縫縮することでARの減少が期待でき(図11)、良好な結果を得ています。
【図11.STJ縫縮術】
病変が弓部~近位下行大動脈(遠位弓部を含む)に存在する場合には、専用の4分枝人工血管を用いて先の低体温併用選択的順行性脳灌流下に弓部大動脈を全置換します(図12、13)。通常は、正面からの胸骨正中切開下に大動脈瘤に到達しますが、症例により左開胸下に到達する場合もあります。適応は紡錘状瘤では55mm以上ですが、この部位では、嚢状瘤のことがあり、その場合45mm程度から手術適応となります(図14)。
※手術成績向上のための対策
【図12.右腋窩動脈を用いた選択的順行性脳灌流下の弓部大動脈全置換術(ステップワイズ遠位側吻合)】
【図13.遠位弓部大動脈瘤に対する弓部全置換】
【図14.脳保護の変遷(1993-2008)】
【図15.弓部嚢状瘤および粥腫】
【図16.待機的弓部全置換の成績】
【図17.右腋窩動脈送血による弓部置換の成績】
※弓部大動脈を含む広範囲大動脈病変:
(1)正中+左開胸ないしは左開胸のみの一期的手術か、(2)正中到達下のエレファントトランク法(Borst、1988)を用いた弓部全置換→左開胸下の下行大動脈置換もしくは経カテーテル的ステントグラフト治療による二期的治療、のどちらかを選択します(図18、19)。若年例に前者を、高齢者や呼吸不全の症例を中心に後者を選択します。最近では、既成ステントグラフトの認可と患者の高齢化に伴い、後者を選択する場合が多くなっています。
【図18.広範囲大動脈瘤に対するエレファントトランク法を併用した弓部全置換→下行大動脈置換ないしはステントグラフト治療による二期的治療】
【図19.(1)エレファントトランク法併用弓部全置換→(2)下行大動脈ステントグラフト治療】
左開胸下に到達しますので、重度の呼吸不全の症例は適応外となります(逆に、胸骨正中切開到達の手術は、一秒量が700ml以上あれば十分可能と考えています)。また、なかでも胸腹部置換は追加で開腹(横隔膜切開)を必要とし、侵襲度も大きくリスクの高い手術です。
※脊髄障害(対麻痺)対策: 最も危惧される合併症として対麻痺の問題があります。当センターでは、1998年に他に先駆けて以下の1.、2.を導入し対麻痺の防止に努めてきました(11、18)。
これに最近では、
などを追加し、さらに安定した成績が得られています(図25-27)
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【図20.MRI、CTによるAdamkiewicz動脈の同定】 |
【図21.脊髄運動誘発電位(MEP)】 |
【図22.部分体外循環下の広範囲胸腹部大動脈人工血管置換(Crawford II型)】
【図23.超低体温下の広範囲胸腹部大動脈人工血管置換(Crawford II型)】
【図24.広範囲胸腹部大動脈人工血管置換(左:術前CT、中央:術中写真、右:術後CT)】
【図25.部分体外循環を用いた下行大動脈置換の成績】
【図26.超低体温を用いた下行大動脈置換の成績】
【図27.胸腹部大動脈置換術の成績(文献を含む)】
NCVC: 国立循環器病研究センター
一部の嚢状瘤を除き、通常の紡錘瘤では最大短経45mm以上を一応の手術適応としています。到達法として変遷はありましたが、現在は標準的な腹部正中切開を選択しています。可及的小さめの切開や下腸間膜動脈の再建を行い、手術の質的向上を図っています。年齢を中心にリスク評価を行い、直達手術かEVARかを選択しています。既成ステントグラフトでは解剖学的に困難なものがあり、その場合は手術の適応とします。待機手術成績は死亡率0.5%以下で、欧米(5%と報告)に比べて明らかに良好です。したがって、現在、直達手術 vs. EVARの割合は、6:4 か 7:3 程度です。ただ、大動脈瘤破裂後の緊急手術成績は依然として不良です。破裂症例では、人工血管置換後、直ちに無理な閉腹はせず、セカンドルックを兼ねて1~2日後に閉腹し、腸管のコンパートメントシンドロームの発生に留意しています。
慢性期の手術適応は、非解離性瘤(真性瘤)と同等ですが、Marfan症候群などの遺伝性結合織疾患の場合は45~50mm程度で手術適応とする。
血栓閉塞型の一部を除いて(最大短径50mm、心タンポナーデ(ショック)や臓器障害(虚血)など様々な致死的続発症が発生するため、ほぼ全例が可及的早期の手術適応となります。通常の大腿動脈送血に加え右腋窩動脈送血を積極的に併用し、真腔の確保、臓器(脳)障害の防止に努めています(2、17、19)。
※エレファント・トランク法を併用した弓部全置換: エントリー(内膜裂孔)切徐が主たる目的であるため、上行置換ないしは部分弓部置換が標準術式となります。しかしながら、比較的若年例で、エントリーが弓部以遠にあるか、弓部の著しい解離を伴う症例、Marfan症候群症例、などでは、根治性を高めるため、エレファント・トランク法を併用した弓部全置換を積極的に行っています(16)(図28)。依然として、臓器灌流を伴う症例、特に冠動脈、脳血管(弓部分枝)の灌流不全の場合に成績が不良ですが、全体では死亡率は数%以下まで改善しています(図29)。
【図28.急性A型大動脈解離に対するエレファントトランク法を用いた弓部全置換術】
【図29.急性A型大動脈解離に対する緊急手術成】
心臓、脳血管が関係するA型解離と異なり、B型解離では致死的な続発症の発生も少なく、ほとんどが保存的治療(血管内科の管理)の対象となります。その後の成績も良好です。ただ、例外的に破裂(切迫破裂)や臓器虚血を伴う、「complicated B dissection」に対しては、下行大動脈置換(超低体温循環停止下)、腹部大動脈開窓術、各種バイパス術などの緊急外科処置を必要とします。準緊急手術の成績は良好ですが、破裂などの緊急手術成績は必ずしも良好とは言えません(図30)。最近ではこの分野においても、ステントグラフト治療や血管ステント治療などの血管内治療を積極的に行うようになってきています(図31)。稀ですが、真性瘤に急性解離が合併して場合も破裂の危険性が高く、早期手術の対象としています。
【図30.B型大動脈解離に対する緊急手術成績】
【図31.急性B型大動脈解離に対するTEVAR】
感染性大動脈瘤や人工血管感染に対しては、通常の人工血管を用いた手術では、大網や筋肉充填を併用しても感染の再発があり成績は不良です。
※同種大動脈(ホモグラフト): 当センターには組織保存バンクがあり、感染に抵抗性のあるヒト同種大動脈(図32、33)を用いて、このような困難な症例にも対応しています。
【図32.ホモグラフト】
【図33.感染性胸腹部大動脈瘤に対するホモグラフトを用いた再建術】
以前より、手術が困難な少数の症例を中心にオーダーメードの日本製ステントグラフトを施行してきました。大きな転換として、2007年に腹部用の、2008年には胸部用の既成のステントグラフト(米国製)の使用が認可され、最近ではその適応を広げています。信頼性の高い製品ですが、未だ長期予後が不明な点があり、解剖学的制約もあって、現段階では75以上後期高齢者や手術のハイリスク症例を中心に本治療を進めています。2007年は43例、2008年には92例と、症例も増加傾向にあります(図34-36)。
※ハイブリッド治療: 特に、弓部分枝(脳血管)、腹部分枝にかかるためステントグラフト単独では困難な症例に、新しい展開として、手術(分枝バイパス)を先行させたハイブリッド手術(図37)を積極的に推し進めています。今後、新しい製品が開発、認可され、この部門はますます発展し、より低侵襲で安全な治療として確立されるものと期待します。
【図34.ステントグラフト治療成績】
【図35.胸部大動脈ステントグラフト治療(TEVAR)】
【図36.腹部大動脈ステントグラフト治療(EVAR)】
【図37.ハイブリッド手術(頸部動脈バイパス→ステントグラフト治療)】
急性、慢性肺動脈血栓塞栓症の外科治療に関しても多くの経験を有します(図38、39)。特に、後者の外科治療は、米国サンディエゴ大学の術式を参考に1995年に当センターに導入し、以後、わが国の主要施設として心臓血管内科(肺循環部門)との共同で、重度の肺高血圧を伴う進行性かつ重篤な本疾患の治療に当たってきました。元々の発症数の違いで、症例数はサンディエゴ校の5%程度に過ぎませんが、手術成績は早期死亡率7%と遜色のない成績が得られています(12、13)。米国の症例に比べ、末梢側病変を有する症例(手術困難例)の頻度が高く、手術適応を含め今後の検討課題と考えています。幸い、数種の血管拡張剤による内科的治療の有効性が認められ、術後遺残肺高血圧症例や手術適応外症例など、本疾患全体の予後の改善が得られています。
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【図38.急性肺動脈血栓塞栓症の摘出標本】 |
【図39.慢性肺動脈血栓塞栓症の摘出標本(acute on chronic症例)】 |
【図40.胸部大動脈手術成績の推移(2001~2007)】
【図41.胸部大動脈手術件数とその成績(1978~2005年)】
下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)を中心に、動脈瘤に対する人工血管置換術や狭窄・閉塞血管に対するバイパス術を施行している。放射線科との共同で治療を進めており、カテーテル治療が優先となるが、重症・困難な症例にはバイパス手術を選択している。時に、手術とカテーテル治療を同時に行う「ハイブリッド治療」も施行しています。
です。症例数が豊富で、専門医の単位取得に有利です。
開設以来、レジデント制度(3年間のレジデント制度と2年間の専門修錬医制度)を有しており、「前期研修」を終えた若い心臓血管外科医の教育の場となっています。1-2年間は血管外科、成人心臓外科部門、先天性心臓外科部門の三部門を数ヶ月ごとにローテートし、心臓血管外科全般を習得します。最後の3年目に希望する部門に半年から1年間所属し、術者経験を積み、海外留学を含めその後の発展につなげる制度です。また、3年を終了した後も、専門修練医として集中的に希望する分野で研修を積むことも可能です。当然、外部から専門修練医として応募することも可能です。当センターでのレジデント制度の長所として、
などが挙げられます。当センター出身者の多くが、現在、心臓血管外科領域で活躍されておられることから、当センターが教育、修練の場として優れていることを物語っていると思われます。
8月の第2、3週の二週間にわたって、全国の医学生(4~6回生が中心)を対象に手術見学と集中講義の心臓血管外科セミナーを開催しています(荻野が開催担当、内線2358)。毎年、20名前後の学生の参加があり、一夏の有意義で充実した時間を過ごしています。そのうちの約20%程度がその後、心臓血管外科の道を選んでいます。卒業後、レジデントとして当センターに戻ってくる参加者もみられます
最終更新日 2011年10月25日